聖書 ローマ 1:7     宣教題 神に愛され、召された者  牧師 中田義直

 

 先週から、今週にかけて神学校週間でした。日本バプテスト連盟には現在三つの神学校があります。教派は神学校である西南学院大学神学部、そして、地方連合立、また、地方連合の支援による東京バプテスト神学校と九州バプテスト神学校です。神学校週間に捧げられる神学校献金はこの三つの神学校で学ぶ神学生の奨学金として用いられます。

 バプテスト教会は、当時の教会のありかたや牧師や祭司、神父といった聖職者のありかたに対する批判をもって生まれました。それは、より積極的には新約聖書時代の教会、また、信仰者の群れの姿を目指したといえるでしょう。そして、御言葉は聖霊の導きによって語られるものであり、それによってこそ神様の御心が示されると考えました。イエス様の弟子たちが、当時の宗教的な指導者や多くの人々から、無学なただの人といわれても、福音を大胆に語ったように、信徒が皆で伝道や神様の働きを担うことを大事にしました。もちろんそこにはコリントやローマの手紙に記されているように、賜物の違いがありますからすべての信徒が同じ働きをするのではありません。異なった賜物を認めつつ、互いにそれを持ち寄ることによって教会をたて、神様の働きを担うことを大切にしたのです。

 しかし、そのようなバプテスト教会の中に深刻な問題が生まれてきました。それは、聖霊の導きと、人間の思いや感覚から発せられる言葉や考えとの区別がつかなくなったということです。そのような人間の弱さを克服するために、共に学び、互いに吟味して、話し合い、時には多数決で物事を決めるということによって、より正しい神様の御心を求めてきましたが、そこにも限界がありました。そのような経験を経る中で、教会は改めて学びの大切さに気づきました。そして、そこに神学校の働きの大切さを私たちは確認したのです。

 イエス様は律法学者の質問に答え、最も大切な戒めとして「心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」と答えられました。この「思いをつくして」という言葉を新改訳聖書では「知力」と訳しています。また、「理性」と訳している聖書もあります。愛は感情ではなく、意志であるといわれます。また、時として人は誤った仕方で「愛」をあらわしてしまったり、受け止めてしまうことがあります。神様を愛し、また、その愛を伝えるために「知力」もまた大切です。イエス様と出会ったパウロは自分の学歴を誇ることはしませんでしたが、深い学びの経験があったからこそ、パウロは民族を超えて届く言葉を語り、福音を伝えていきました。

 このパウロは広く世界に福音を伝えるため、当時の世界の中心であったローマに行くことを願っていました。そして、ローマの教会に手紙を書き送りました。そこでパウロはローマの教会の人々に「1:5 わたしたちはこの方により、その御名を広めてすべての異邦人を信仰による従順へと導くために、恵みを受けて使徒とされました。1:6 この異邦人の中に、イエス・キリストのものとなるように召されたあなたがたもいるのです。――1:7 神に愛され、召されて聖なる者となったローマの人たち一同へ。わたしたちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにあるように」と語りかけます。パウロはローマの教会の人々を共に伝道を担う仲間と理解しています。

 この言葉は、私たちに語りかけている言葉でもあるのです。イエス・キリストと出会い、信仰に導かれた私たちはは、皆、神に愛され、召されて聖なるものとされているのです。そして、私たちはそれぞれの信仰に応じて、賜物が与えられています。あるものは神学校での学びの機会が与えられ、あるものはその働きを捧げものを通して支えます。そこには働きの違い、また、賜物の違いはありますが、上下はありません。大切なことは、一人一人が神に召され、愛され、聖なるものとされていることを認め合ってゆくことでしょう。そして、互いに互いを自分よりもすぐれたものとして受け入れ、共に神様の働きを担ってゆくことです。

 その時、私たちの違いは対立や分裂ではなく、豊かさと深さとなってゆくことでしょう。

 

ー祈り-

 主なる神様、こうして共に主の日の礼拝を捧げる幸いに感謝いたします。

 神様、あなたは御子イエス様をお遣わしになり、私たちに対する愛をお示しくださいましあ。そして、罪深く、あなたの前に取るに足りない私たちを召し、聖なるものとしてくださいました。私たちは、この恵みの出来事を隣人に伝えたいと願っています。一人一人は本当に弱く限界だらけのものですが、互いに互いを尊敬し、愛を持て賜物を持ちよるなら、一人ではできないことを担ってゆくことができるでしょう。

 主よ、私たちを聖霊の導きによって、結び合わせ、互いのたまものを喜びつつ、福音伝道の働きを担うものとしてください。

  この祈りと願い、主イエス様の御名を通して、あなたの御前にお捧げいたします。アーメン

 

ー聖書-   ローマの信徒への手紙 1章7節

神に愛され、召されて聖なる者となったローマの人たち一同へ。わたしたちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにあるように。