聖書　Ⅰペトロ　4：10　　　 宣教題　「恵み」への感謝　　　説教者　　中田義直

　

　教会の暦では、今、私たちはイエス・キリストの受難を覚える受難節の時を歩んでいます。

イエス様は私たちの罪を背負い、本来ならば私たちの受けなければならない神からの裁きを十字架で受けてくださいました。この十字架の贖いによって、私たちは罪から救われ、神の民とされ、永遠の命の約束をいただきました。イエス様はこの救いの完成をご自身の復活を通して私たちに示してくださいました。

　私たちは神様から与えられた「恵み」によって、神の民とされています。しかし、私たちは自分自身の行いや言葉、そして、心に思うことの中に神様の御心に反しているという事実に気づき、苦しみ嘆きます。パウロはローマの手紙「7:15 わたしは、自分のしていることが分かりません。自分が望むことは実行せず、かえって憎んでいることをするからです。7:16 もし、望まないことを行っているとすれば、律法を善いものとして認めているわけになります。7:17 そして、そういうことを行っているのは、もはやわたしではなく、わたしの中に住んでいる罪なのです。7:18 わたしは、自分の内には、つまりわたしの肉には、善が住んでいないことを知っています。善をなそうという意志はありますが、それを実行できないからです」と記します。また、長老ヨハネは彼の第一の手紙に「1:8 自分に罪がないと言うなら、自らを欺いており、真理はわたしたちの内にありません。1:9 自分の罪を公に言い表すなら、神は真実で正しい方ですから、罪を赦し、あらゆる不義からわたしたちを清めてくださいます。1:10 罪を犯したことがないと言うなら、それは神を偽り者とすることであり、神の言葉はわたしたちの内にありません」と記しています。

　私たちはキリストの救いにあずかっていますが、罪の残像に悩まされています。そこには二つの理由があるでしょう。第一には、キリストの光の中で神様の御心を知るようになったからです。神様を知ることによって、神様を意識せずに生きていた時には気にも留めていなかった自分自身の行動や心の動きの中に、神様の御心に沿わない弱さ、罪があることに気づいてしいます。そして、もう一つは私たちは不完全であり、神様のみ国に至る途上にあるからです。救いにあずかる私たちは、しかし、まだ完成いたらない不完全な者として歩んでいるからです。

　ここで決して忘れてはならないことは、私たちは罪から救われている、ということは事実だということです。なぜなら私たちは自分の力で神にふさわしいもの、神の民となったのではありません。神にふさわしくないものが、ふさわしくないままに、神様からの一方的な「恵み」によって救われているのです。パウロも長老ヨハネもこの事実を語っています。私たちにできること、それは自らの罪を認め、その罪をゆるしてくださる神様の憐れみを信じることです。誤りを繰り返す私たちを決して見捨てることなく神様は愛を注いでいてくださるということを信じすことです。そして、私たちに求められていることは、その愛に応えて生きることなのです。ペトロは「4:10 あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのですから、神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕えなさい」と記しています。私たちは神様からそれぞれ異なった賜物を与えられています。自分に与えられている賜物を、自分を喜ばせるためではなく、互いのために用いていくこと、それこそが神様の愛に応えて生きるということなのです。

　私たちは自分に賜物があるのだろうかと疑問に思うことがあるかもしれません。そして、そのように思う時、その多くは誰かと自分を比較している時ではないでしょうか。ある心理学者は「劣等感と優越感は同じ根っこを持っている。その根っこは自意識過剰だ」と言っています。「私、私」という思いがあるから人と比べてしまうというのです。「あの人と比べて私は」と感じるのです。そして、このような自意識が人間を罪に誘ったと聖書は語っています。しかし、神様は賜物を与えてくださっています。そして、私たちが神様に与えられながら見落としやすい「賜物」があります。それは自分のためでなく、他者に仕えるために与えられてる賜物です。神様から与えられている最も大きな「イエス・キリスト」という恵み、そして、日々生きていく中で与えられている「恵み」があります。この恵みへの応答として、私たちは与えられている賜物を用いて、互いに仕えあうのです。

 

ー祈り－

　主なる神様、こうして共に主の日の礼拝を捧げる幸いに感謝いたします。

　主よ、あなたはイエス・キリストに私たちの罪を背負わせ、十字架への道を歩む救いの計画を完成してくださいました。私たちに与えられた恵み、救いはイエス様の痛みと苦しみにより与えられたかけがえのない高価な恵みです。この恵みを感謝して受け撮っていくことができますように。そして、その感謝をあなたへの愛と、互いに仕えあう隣人への愛をもってあらわしてくことができますよう、お導きください。

　 この祈りと願い、主イエス様の御名を通して、あなたの御前にお捧げいたします。アーメン

ー聖書－　　ペトロの手紙Ⅰ　４章１０節

4:10 あなたがたはそれぞれ、賜物を授かっているのですから、神のさまざまな恵みの善い管理者として、その賜物を生かして互いに仕えなさい。