教会を愛したパウロの手紙              牧師 中田義直

4月から教会学校では「コリントの信徒への手紙」を学んでいます。この手紙の中でもっとも親しまれているのは、第一の手紙13章の「愛の賛歌」と呼ばれる御言葉でしょう。この個所は当時の教会で実際に歌われていた賛美歌の歌詞の引用だと考えられています。
ところで、二十年ほど前ですがある教会の執事さんとお話をした時のことです。その方が教会に来はじめた青年時代、この「愛の賛歌」に深く感動したことをきっかけに、コリントの手紙を読んでがっかりした、という思い出話しをしてくださいました。その理由は「“愛の賛歌”のように崇高でロマンティックな言葉に溢れているだろうという期待が裏切られた」ということでした。教会の中での対立が語られ、それに対する感情的とも思えるパウロの激しい言葉に心が痛み、失望したというのです。
しかし、今ではコリントの手紙をとても大切にされているそうです。青年時代から続けて教会生活を送り、執事にも選ばれ、教会の困難な課題に直面したり、心を痛める経験をされたそうです。そして、改めてコリントの信徒の手紙を通読したところ、がっかりするどころか、教会に対するパウロの愛情に心打たれたそうです。教会の状況が必ず良い方向に向かうと信じているパウロの姿に感動したそうです。「愛するとは、あきらめないことですね」と話しておられた笑顔が今でも印象に残っています。