聖書 マタイ 19:13~15     宣教題 子どもを祝福されるイエス様  牧師 中田義直

 

 イエス様は子どもたちを見もとに呼び寄せて、祝福なさいました。子どもたちに幸いがあるようにと、神様らの素晴らしい恵みを受けることができるようにと、子どもたちのためにイエス様は手を置いて祝福を祈られたのです。その様子を思い浮かべるならば、私たちはとてもあたたかなほのぼのとした場面を思い描くのではないでしょうか。イエス様の笑顔、子どもたちの笑顔、そして、それを取り巻く親や大人たちの笑顔があふれている、そんな場面を思い浮かべます。私が教会の牧師として経験してきた子どもを祝福する教会の行事は、教会全体のことであれ、一つの家族のことであれ、いつもそのような雰囲気の中で行われてきました。

 ところが、福音書に記されているのは、そのようなほのぼのとした状況とは異なっていたようなのです。そこには、こうあります。「そのとき、イエスに手を置いて祈っていただくために、人々が子供たちを連れて来た。弟子たちはこの人々を叱った」とあるのです。この同じ場面がマルコ福音書では、このように記述されています。「10:13 イエスに触れていただくために、人々が子供たちを連れて来た。弟子たちはこの人々を叱った。10:14 しかし、イエスはこれを見て憤り、弟子たちに言われた。「子供たちをわたしのところに来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのような者たちのものである。10:15 はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。」10:16 そして、子供たちを抱き上げ、手を置いて祝福された」。ここでは、子どもを連れてきた人々を叱った弟子たちに対してイエス様が憤られたと記されています。マタイ福音書ではイエス様が憤ったことには触れていませんが、このイエス様が子どもたちを祝福された場面には、イエス様から厳しく怒られた弟子たちがいたのです。このとき彼らは、微笑みながらこの様子を見ていたようには思えません。気持ちを切り替えて、笑顔を作ることはできたかもしれませんが、そこにはイエス様に自分たちの判断が間違っていたことをはっきりと示された弟子たちがいたのです。

 弟子たちはイエス様のことを思って、子どもを連れてきた人たちを叱ったのではないでしょうか。子どものことでイエス様のことを煩わせてはいけないと考えたのかもしれません。しかし、このとき弟子たちは「イエス様が何を望んでいるか」ということをしっかりと受け止めていませんでした。

 私たちは自分の経験の中で、物事を判断します。経験というのは、実際に体験したことだけでなく教えられてきたこともあるでしょう。最初に経験したことを、これはこういうことなのだと理解してしまうことがあります。食べ物の調理の仕方や調味料など当たり前と思っていたことが自分の家だけの習慣だということなどもあります。そして、比較的簡単に「そういうものだ」ということから解放されることもあれば、なかなか慣れなかったり受け入れることの難しいものもあります。食べ物の調理の仕方などは、それほどほかに影響のないものもありますが、良い悪いといった「何を善とするか」ということや常識として教えられてきたものなど、簡単には変えられないものがあります。また、教えられたり刷り込まれてきた敵対感情や差別感情といったものから解放されるということも決して簡単なことではありません。

 そのような「とらわれているもの」は誰にでもあるでしょう。そして、私たちはそのようなとらわれていることに気づかずに、当たり前のこととして善悪の判断をしてしまいます。弟子たちは彼らの考えによって判断し、子どもに手を置いて祈っていただきたいとイエス様のもとに子どもを連れてきた人々を叱ったのです。それは彼らの善意からの行動、こうすることが良いことだという思いから行ったことでした。しかし、それはイエス様の思いと異なっていたのです。イエス様は弟子たちに「子供たちを来させなさい。わたしのところに来るのを妨げてはならない。天の国はこのような者たちのものである」とおっしゃったのです。

ー祈り-

 主なる神様、こうして共に主の日の礼拝を捧げる幸いに感謝いたします。

 イエス様は子どもたちを見もとに導かれました。そして、弟子たちに「子どもたちを来させなさい。わたしのところに来るのを妨げてはならない。天の国はこのような者たちのものである」と教えられました。神様、あなたの愛を信じ、あなたの前に罪を告白し自らをあなたの御手に委ねる者をあなたは天の御国へと迎い入れてくださいます。

 主よ、私たちが子どものように、自分自身をあなたの御手に委ねることができますようにお導きください。

  この祈りと願い、主イエス様の御名を通して、あなたの御前にお捧げいたします。アーメン

 

ー聖書-  マタイによる福音書 19章13節~15節

そのとき、イエスに手を置いて祈っていただくために、人々が子供たちを連れて来た。弟子たちはこの人々を叱った。 しかし、イエスは言われた。「子供たちを来させなさい。わたしのところに来るのを妨げてはならない。天の国はこのような者たちのものである。」そして、子供たちに手を置いてから、そこを立ち去られた。