神と人との良き関係の中で              牧師 中田義直

使徒パウロが記した「フィリピの信徒への手紙」は“喜びの手紙”と言われています。手紙の中に繰り返し“喜び”という言葉が記されているからです。その背景には、フィリピ教会とパウロとはとても良好なの関係があるといわれています。例えばコリントの教会やガラテヤの教会にはパウロと友好的な人だけでなく、敵対する人々がいたことがそれらの教会に宛てた手紙からうかがわれます。しかしフィリピ教会の人々は全面的にパウロを支援していました。
”喜び”という言葉にあふれている「フィリピの手紙」ですが、1章に「わたしが監禁されているのはキリストのためである」と記されているように、この手紙を執筆した時パウロは捕らえられ、獄中にあったと考えられています。そして、この手紙は獄中という状況にありながらも、パウロの心は喜びにあふれていたということを示しているのです。
パウロの置かれていた状況は喜べるようなものではありませんでした。しかし、パウロはその状況を超える“喜び”を知っていたのです。それは主にある兄弟姉妹として、祈りをもって物心両面からパウロを支えていたフィリピ教会との関係であり、何よりもそのような交わりの基となっているキリストの贖いによる神様との関係です。このような二つの素晴らしい関係の中で、パウロは困難な状況を超える喜びに溢れていたのです