他人事(ひとごと)としてでなく 牧師 中田義直
マタイとルカの二つの福音書にイエス・キリストの誕生の出来事が記されています。マタイは父となるヨセフに、一方、ルカは母となるマリアにスポットライトを当てて誕生の物語を記します。二つの誕生物語は、どちらも神秘的であると同時に非常に現実的な物語です。処女懐胎、天使のお告げなど、とても神秘的で幻想的に描かれています。
一方、ローマ皇帝による人口調査の強行と、それに翻弄されるローマに支配された国々の人々の困惑。また、新しい王の誕生という知らせにヘロデ王をはじめとして、エルサレムの人々が恐れを抱いたことなど、イエス様の誕生の物語には、非常に現実的で政治的な背景が描かれています。そして何よりも、この地上で神の子の親となるという大きな使命を担うことになる、ヨセフとマリアの戸惑いと恐れが色濃くにじみ出ています。
この現実の世界の中で、神様の御心に従って生きるというのは、容易なことではありません。神の御心に従う人生の選択は、他人から理解されないこともあるでしょう。しかし、戸惑い、恐れを抱きながらもヨセフとマリアは神様の導きに従うという人生の選択をしたのです。
私たちもこのような人生の選択が求められる時があるかもしれません。その時、私たちは神様の導きに従う人生の選択ができるでしょうか。今、私のこととして、クリスマスの出来事を受け止めてみたいと思うのです。