パウロの「祈り」                  牧師 中田義直

教会学校では、今、「ローマの信徒への手紙」を学んでいます。この手紙について、新約聖書の27文章の中で最も重要な文章だと評価する聖書学者や神学者の方々がいます。その理由は、キリスト教信仰について体系的に記されている文章で、神学的、思想的に深い内容を持っているからです。ユダヤ教と言う民族性の強い宗教から生まれたキリスト教は、この手紙に示されている思想的な普遍性によって、民族を超えた世界宗教となったと評価する宗教学者もいます。
一方、このような深い内容を持っているため、「ローマの手紙」は理解することが難しい「難解な文章」と評価されることもあります。確かに、このような評価も正しいでしょう。しかし、「ローマの手紙」を読んでいくときに忘れてならないことがあります。それは、パウロがこの手紙を書いた目的です。パウロは、当時の地中海沿岸社会の中で「地の果て」と理解されていたエスパニア(スペイン)まで福音を伝えたいという、伝道への強い情熱を持って「ローマの手紙」を書きました。つまり、この手紙は福音伝道を進めたいという、パウロの「祈り」でもあるのです。
知的な学びとして手紙の内容を正しく理解することも大切ですが、そこに込められているパウロの「祈り」を受け止めていくことも忘れてはならないでしょう。「地の果てまで福音を伝えたい」というパウロの「祈り」に心を合わせながら「ローマの信徒への手紙」を学んでまいりましょう。