福音書記者マルコの視線 牧師 中田義直
教会暦では、2月14日から受難節に入りました。この受難節は四旬節ともいわれます。四旬というのは四十日間のことですが、日曜日を除くためイースターの前の46日間を受難節とし、イエス様の苦しみを覚える時としています。
ところで、今、教会学校ではマルコ福音書を取り上げています。全体で16章からなるマルコ福音書は、11章からイエス様の最後の一週間が始まります。つまり、イエス様の1年間の公活動を記している福音書全体のおおよそ三分の一が受難週の記事なのです。そして、ここに「福音書」の特徴があると言われています。もし一人の人の人生を記すことを目的とした「伝記」なら、このようなバランスにはならないでしょう。また、マルコ福音書にはイエス様の誕生の記事は記されていません。これも「伝記」とは異なる特徴といえるでしょう。福音書記者マルコはイエス様の生涯を記録することではなく、イエス様を通して知らされた神様からの喜びの知らせ「福音」を伝えることを目的として「福音書」を記しました。
そして、この喜びの知らせは、神の御子の「苦しみ」と御子を世に遣わした神ご自身の「苦しみ」によって、私たちに与えられた「恵み」の賜物
(プレゼント)です。「福音」は神の御子イエス様の苦しみを通して与えられた、という事実をマルコはしっかりと見つめているのです。